バランスの取れた生活で認知症を防ごう
大阪大学大学院医学研究科池田学教授の講演「認知症の予防と治療」を聴く機会があった。以下はその要約である。
「一番なりたくない病気は何か」というアンケートを取ると、癌ではなく認知症という結果がでる。2011年の調査によると、全国で認知症患者は462万人、予備軍は400万人であった。現在ではそれぞれ500万人と推定されている。
高齢者の比率が増加しているので、今後も増えると思われる。65歳以上の高齢者は、大阪万博の年1970年には7%で高齢化社会といわれた。1994年に14%と倍増し高齢社会、2005年には20%となり超高齢化社会となった。その上、65歳以上の一人暮らしの人の比率は毎年右肩上がりで上昇している。
物忘れ、うつ病、せん妄、健忘症、失語症で病院を訪れる人がいる。これは必ずしも認知症ではない。認知症と正常老化の違いを比較すると次のような表になる。
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認知症 |
正常加齢 |
原因 |
病気 |
加齢 |
自覚 |
なし |
あり |
記憶 |
経験自体いえる |
明確に思い出せない |
社会生活 |
困難 |
支障なし |
認知症に至らない症状に「せん妄」がある。これは軽い意識障害で意識水準が低下する。この原因は薬にある。抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬、筋弛緩剤、利尿薬、抗がん剤、ホルモン剤が影響する。二つ以上の病院で治療を受ける場合は、薬手帳を示すなどして注意する必要がある。
認知症の危険因子は加齢である。5歳ごとに倍増する。75歳から79歳では5%の人が認知症であるが、80歳~89歳は30%、90歳~94歳は60%となる。
それでは認知症は予防できるか。原因は脳梗塞である。脳梗塞は早期発見、早期治療で予防できる。頭部CTで梗塞があると判断すれば、大きな血の塊を取り除く手術を受けることが出来る。
喫煙、大酒、高血圧、糖尿病、脂質異常、心臓病、痛風は脳梗塞の予備軍である。
脳梗塞のなりかけには、意欲が低下する。たとえば外からヘルパーさんが来ている時は、家事もできるが、一人になると何もできない。閉じこもりになる。昔は、家族が多く体を動かさざるを得なかった。寝転んでいると孫が心配して声を掛けるようなことがあった。一人暮らしの増加で家族の支えが減ってきた。それに替わるのがデイサービスである。(体も動かし、緊張もするからだと思う)
肥満や糖尿病に注意し適度な運動が必要である。閉じこもりは運動量が低下する。読書やテレビを見て知的活動をするなどバランスのとれた生活をするように心掛けるべきである。
以上が講演の要約である。
加齢黄斑変性の患者は、外出時の転倒を恐れ自宅に引きこもりがちにならないようにしたほうがよいと思う。バスや電車に乗って外出すれば、体を動かすし緊張もする。外の世界の刺激も得られると思う。友の会の企画する定例会のほか、歩こう会や見学会多くの人の参加を期待している。 (髙田 忍)