NPO法人への道のり
1.なぜNPO法人か
関西黄斑変性友の会は2018年4月2日、特定非営利活動法人(NPO法人)の法人登記の申請を大阪法務局に行い、新たなスタートをすることになった。法人化によって、より多くの患者に情報を提供できるよう努めていきたい。
「友の会」は黄斑疾患の患者団体である。全国に70万人の患者がいると言われているが、その内会員になっているのは70人に満たない。患者団体の目的は、医師から聞くことのできない患者の貴重な体験を相互交流しようとすることにある。この目的を実現するためには、より多くの患者を会員になっていただく必要がある。
その方法としてホームページの活用や病院でのポスター掲示である。ホームページでは広告などの効果がある。病院ではNPO法人であることが信用を高める手段になる。そこで昨年から法人化に向けて準備を続けてきた。法人化を検討している他の患者団体の参考になればと思い、記録を掲載した。
2.どのような手続きが必要か
ではどのようにすればNPO法人にすることが出来るか。インターネットで検索すると、NPO法人設立を支援する司法書士などが出てくる。規模の小さい団体が、そのために費用をかけることは経済的にも負担になる。
内閣府のホームページには解説が書かれている。
大きな手続きは、二つのステップがある。自治体の認証の後、法務局での法人登記である。先ず設立する自治体の認証を得ること、認証を得たのちに法務局に法人登記をすることによって法人として認められることになる。
法人とは法律で認められたもので、個人と同じように契約などの行為が出来る。
3.どこで申請するかの判断
NPOの申請は都道府県か政令指定都市である。主たる事務所の所在地を決定して設立認証を申請する自治体を決めなければならない。
友の会の事務局が大阪市生野区にあるので、大阪市で手続きをとることにした。大阪市のホームページに詳しい申請の仕方が記されている。
大阪市の場合、窓口は市民局市民活動支援担当NPO法人グループである。
市役所地下一階にある
4.必要な書類
大阪市の場合「特定非営利活動法人設立認証申請書」に以下の添付書類を添えて申請する。いずれも、大阪市のホームページらダウンロードできる。
添付書類に設立総会議事録が含まれていることから分かるように、申請に先立ち設立総会を行う必要がある。
友の会は、定例会の日に合わせて設立総会を開催した。事前に開催通知を会員に送り、総会に参加できない会員から「委任状」を取るようにした。
以下、それぞれの添付書類の書き方の留意点、注意事項を記す。
(1)定款
大阪市のひな形をもとに作成する。特に目的事業はそれぞれの法人によって異なるので丁寧に記載する必要がある。
友の会の場合は次のような記載をした。
目的及び事業
この法人は、主として関西に在住する黄斑疾患の患者、その家族及び支援者に対して、医療や治療に関する情報、社会生活上の諸情報の提供と相互交換に関する事業を行うとともに、疾患に関する知識を深めることにより、これら患者の日常生活上の不安を緩和し社会参加の促進を通じて社会に寄与することを目的とする。
この法人は、その目的を達成するため、特定非営利活動促進法(以下「法」という。)第2条別表のうち、次に掲げる種類の特定非営利活動を行う。
(1)保健、医療又は福祉の増進を図る活動
(2)前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
この法人は、その目的を達成するため、次の事業を行う。
(1) 特定非営利活動に係る事業
① 定期的な情報誌の発行に関する事業
② 交流会、講演会の開催に関する事業
③ 体験談集、社会生活情報誌などの発行に関する事業
会費等も独自に決めることが出来る。
年会費は正会員の場合は3000円、賛助会員は5000円とした。
(2)役員名簿
役員には理事長、副理事長、理事、監事を決めなければならない。
役員の締めに続いて住所の欄がある。住所は住民票記載の通りに書かなければならない。細かいことであるが、日常は「久出ヶ谷町」と小さい「ヶ」を皆既慣れているが、住民票は「久出ケ谷町」のように大きな「ケ」になっている。注意が必要である。
(3)就任承諾書
所定の様式に従って役員に就任する人から提出してもらう。就任承諾日は「設立総会」の開催日より後の日付でなければならない。
設立総会の前に、承諾日を空欄にして提出してもらう。
(4)役員の住民票
(5)10人以上の会員名簿
(6)法例の該当することを確認した書面
(7)設立趣旨書
(8)設立総会議事録
議長の他に議事録署名人名の署名捺印が必要である。
(9)事業計画書
(10)活動予算書
収支の計算に誤りがないか、整合性があるか確認する。
一旦出来上がった所で、市の窓口に持参しチェックを受けると良い、親切に指導をしてくれる。
5.認証通知
認証申請すると閲覧がなされ、約3カ月後に認証した旨の連絡がある。
窓口に出向き、認証通知と定款を受領する。
登記には法人の実印が必要となる。印鑑の店に出向き注文する。一日で出来上がる。
法人の実印は個人の実印と異なる。丸印で外側に法人名、内側に「理事長印」と入れる。
6.登記
認証通知を受領後2週間に内に登記申請をする必要があるので、すぐ法務局に出向き必要書類の等手続きを相談する必要がある。
大阪法務局の場合地下鉄天満橋
窓口がいくつもある、先ず相談室に行き、説明を聞いた後書類を作成し、申請窓口に提出する。
約10日後に登記が完了する。
7.大阪市への届け出
登記事項明書等を添付して大阪市に届ける必要がある。
8.全体の流れを整理すると
2017年11月1日 | 設立総会開催通知、役員就任依頼 |
2017年11月30日 | 委任状集約 |
2017年12月7日 | 設立総会開催(大阪市内) |
2017年12月15日 | 大阪市に設立認証申請書 |
2018年3月19日 | 大阪市から認証の連絡 |
2018年3月20日 | 認証通知受領 |
2018年3月22日 | 大阪法務局に相談 |
2018年4月2日 | 大阪法務局に設立登記申請 |
2018年4月12日 | 登記事項証明書 |
法人化を決定してから、完了するまで約五か月半かかった。
9.その他
(1)いかなる団体であっても会計の透明性が求められる。出来るだけ、団体名義の口座を作っておいた方が良い。例えば、ゆうちょ銀行は任意団体であっても、団体の規約を添えて申請すれば口座開設ができる。
(2)NPO法人は設立すれば、それでおしまいというわけではない。設立後も自治体に定期的に事業報告や役員の異動の報告をしなければならない。このような事務に多くの時間や労力がとられる。本来の活動がおろそかにならないよう体制を整えておく必要がある。
(3)患者団体にとっては財政上の問題もある。会員の会費のみで運営することは困難である。助成する機関があるので積極的に応募するのも解決策の一つである。
(高田 忍)