セカンドオピニオン
今まで聞いたこともない病気や難病に罹(かか)ると、誰しも今受けている治療法でいいのかと不安になることがある。先生の言葉足らずや一寸した不用意な言葉に接するとなおさらである。尤も、こうした先生の言葉使いは、患者の側の感情的な態度に影響している側面があるかもしれない。コミュニケーションには双方に問題がある。
いずれにしても、患者にとっては信頼できる医師の下で安心して治療を受けるのが望ましいが、そのような医師を探すのは容易なことではない。このような治療に対する不安を解消する方法の一つがセカンドオピニオンである。
6年前、妻が大阪の大学病院で血液癌(けつえきがん)の一つである骨髄異形成症候群(こつずいいけいせいしょう)と診断された。満室のため自宅近くの市民病院に入院することになった。担当の先生は無神経にも「一年後の生存率」を口にした。そして、抗ガン剤治療を行うという。この治療法で本当にいいのかと思い、セカンドオピニオンをとることにした。
問題は、どの病院の、どのような医師の意見を聞くかである。インターネットで治療実績の多い病院を検索した。その中から京阪神に限定せず、名古屋から岡山まで範囲を広げた。病状の進み具合で三回、それぞれ二人の先生、合計六人の先生から意見を聞いた。
結果は、どの先生も特に異なる治療法を示すことはなかった。それでも病院によっては、一人の先生だけで判断せず、他の医師と協議して丁寧な説明書を書いてくれるところがあった。また、他の病院の知り合いの医師にその場で電話してくれる先生もいた。
そうしたなかで、神戸の病院の先生は人柄もよく信頼できると判断したので転院することにした。おかげさまで、この先生の下で治療を受けた結果、生存率20%になるといわれた一年どころか、さらに半年も長く生きることが出来た。この先生の医療技術もさることながら、安心して療養生活を送ることが出来たからだと思っている。
セカンドオピニオンは病気の診断が正しいか否かを聞くためではない。その治療法が妥当かを聞くものである。癌であれば、手術か放射線投射かを選ぶことが出来る。最近はオブジーボという薬もある。
しかし加齢黄斑変性の場合は、治療法は限定されている。選択肢が多いわけではない。違った治療法を示される可能性は少ないと思う。とはいえ、今まで抗VEGF薬の注射をしてきたのに、これからは必要ないなどといわれることもある。すると何もしなければ悪化して、最悪の場合は失明するのではないかと不安になる。
安心するためにセカンドオピニオンをとる価値はある。先ず、病院を探すことから始まる。私であれば、やはり妻の時にしたようにインターネットで治療実績の多い病院を調べる。他に、製薬会社のホームページの病院検索を利用する。どちらも共通する病院が並んでいるので、その中から病院を選ぶことになる。
セカンドオピニオンは患者のための制度である。今罹っている先生の恩義に反するのではないかと心配する必要はない。手続きは、病院の「地域医療センター」というような名称の患者相談窓口が教えてくれる。 (髙田 忍)